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2013年7月20日 (土)

遺伝子解明がもたらすもの―NHKスペシャルを見て考えさせられた

 7日のNHKスペシャルは「あなたは未来をどこまで知りたいですか―運命の遺伝子」というタイトルで、遺伝子解明がもたらしたものを取り上げていた。

 人間の遺伝子解明が始まったのは1991年頃で、それから12年かかって30億個もあるという、ヒトのすべての遺伝子の構造が解明された。

 その翌年の2004年に、日本の理化学研究所が「次世代シーケンサー」という画期的な遺伝子解析の器械を発明した。それ以後は、たった1日で、30億個もある遺伝子を調べることができるようになた。

 12年も要した頃は1回で96個しか調べられなかったのが、1回で29万個も可能になり、スピードは2000倍にもなったというのだ。

 ヒトゲノム計画で全ての遺伝子の構造を知ることができたが、それをもとにさらに研究が進められて、遺伝子の僅かな違いを手掛かりに、今では何百もの病気の遺伝子構造も分かってきた。

 世界で遺伝子利用が一番進んでいるアメリカでは、遺伝子を調べるキットが市販されている。価格はたった99$(約1万円)で、脳梗塞、心臓疾患、乳がんなどのガン、アルツハイマー・・・・・など、120種類もの項目を調べることができるという。

 アメリカの有名な女優、アンジェリーナ・ジョリーさんが遺伝子検査をもとに健康な乳房を切除して世界中の話題となった。彼女の場合、将来乳がんになる確率は87%ということで手術を決意したのであった。それにより罹患確率は5%に減少したということだ。87%の残りの13%は、化学物質、ストレスなどの環境要因なのだという。

 日本でもインターネットで、検査キットを買うことができ、記憶力、円形脱毛症、肥満など37項目を調べることができるそうだ。アメリカの場合も日本の場合も検査は簡単で、唾液を特別の容器に入れて検査会社に送るだけである。1か月後には結果が知らされるのである。

 武庫川女子大薬学部では入学の際、唾液を検査紙に載せて遺伝子を調べるそうだ。何の遺伝子かというと、酒に強いか弱いかである。結果は4時間で分かり、A~Dに分類されたものが知らされる。Aは酒が好きで強いが酒乱になる恐れがある。Bは酒に強いが酒乱にはならない・・・などである。

 私は酒は好きだが乱れたことはない。それは理性の問題だと思っていたが、遺伝子だとすると、成人式のときに全員を調べるとよいのではないかと思った。

 遺伝子検査の有効な例として、日本では肺がんの人の例が紹介された。大きな肺がんがあり、手術も不可能な女性が、遺伝子検査をもとに新しく作られたALK阻害薬によって劇的に快復しているという。肺がん患者にとっては大変な朗報である。

 アメリカのニコラス君の場合も凄い。赤ん坊の時から食物を食べると腸に穴がくという奇病で8歳までに160回も手術した。医師たちは最後の手段として遺伝子を調べることにした。すると遺伝子の異常が16000余りも見つかった。その中から1つのXIAP遺伝子を特定した。それは腸の免疫に関係をしていた。

 それで治療のために骨髄移植をして健康な遺伝子と入れ替えた。9歳になったニコラス君は元気になり普通の生活をしている。

 これらの例のように、難病や治療が不可能と思われた病気が遺伝子を調べることで治療法が見つけられる場合はよいが、アルツハイマー病のような、現時点では治療法がない病気の場合は、遺伝子検査で将来の確率が分かっても不安になるばかりである。

 中国の例は驚くべきものである。英才教育の一環として、幼稚園の段階で遺伝子タイプを調べ、どんな才能があるかを調べるというのだ。運動、音楽、舞踊、絵画などさまざまな才能を遺伝子レベルでチェックするのである。

 ある女の子は、親が運動選手だったので運動能力が高いと思って、親はそちらに期待していた。調べてみたら、筋力、反発力など運動関係は普通であった。ところが意外なことに美術方面の才能があることが分かった。それでそちらの方面を伸ばすことにした。女の子は将来美術家を目指している。

 また、ある男の子は、ダンスの才能を示す遺伝子があることが分かり、ダンスの練習に励み、2年で優勝するまでになったという。

 中国の遺伝子検査には、マレーシア、トルコなどからも検査の依頼があるといい、何と日本人もすでに3000人が検査をしてもらったそうだ。

 これまでは才能について、何となく向き、不向きを知って、努力によってそれを伸ばすようにしてきた。それが今や遺伝子を調べれば才能の有無が分かるというのだ。

 もっと驚くことは、北京ゲノム研究所の例だ。そこでは知能指数が160以上の人の遺伝子2600人分集めて調べている。天才、秀才がどのような遺伝子を持っているのかを解明するという。

 さらに驚くべきことは、アメリカ、デトロイトのある会社の例である。その会社では受精卵を調べて、その段階でどんな危険因子を持っているかを調べ、病気の少ない受精卵を選んでくれるというのだ。今では毎日検査依頼があり、その数は増えているという。

 受精卵で病気の危険性が少ないものを選ぶというが、それはまだいいかもしれない。なるべく健康な子供を欲しいという願いに応えるということだ。でも、もし、才能まで受精卵で選べることになると、それが果たしていいことなのか疑問に思う。

 人間はどこまでも神の領域に踏み込んでいくが、もし、人間が天才や秀才ばかりになってしまったら・・・・果たして人類のためによいであろうか?

 

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