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2014年10月24日 (金)

石田天海 奇術50年の歩み ④

 明治42年甲種合格出兵役となった。この軍隊生活の中でただ一つ忘れがたい思い出がある。それは明治大帝に奇術をご覧にいれた事である。全く唐突な話ではあるが、入隊2年目に明治天皇が名古屋の離宮にお出でになり、その時に儀仗兵として任務に就いた。

 ある日、上官の命令で陛下の旅情をお慰めの趣旨で、何か芸を天覧に備えよとのことだった。今日の時代と違って天子様を見ると目がつぶれると言われた時代だから、命令を聞いただけで体が細かく震えるあり様だった。

 「上等兵一等卒石田貞次郎、只今より手品を始めるであります」最敬礼をして始めたはいいが、無我夢中のうちに終わってしまった。後で、陪席の上官に尋ねると「なかなかの出来栄えだった」と聞いてようやく我に返り冷や汗が引いた。

  ご覧に入れたものは、白紙を剣先型にたたみ、これに火を点じて焼き、一抹の焼け残り空吹流しのテープを数条繰り出す手法である。陛下の御前でなかったら、ちょっと胸を張って「燃え残りましたる白紙、小手のうちにてより上げ、よって貴方へ投ずる時は、美濃は養老山、暫時白糸の滝」見得を切るところである。

 ここまでは良いが、あとは見よう見真似の悲しさで、今思い出しても背中がゾーとして冷たくなる。向こうに投げた白糸を手繰り寄せたのを、素早く丼の中に入れ、上から水を注ぐ。と、たちまち名古屋名物きしめんと早変わり、これを陛下の御前で、臆面もなく箸でつまみ上げて、ツルツルと食べてご覧に入れたのは、まったくの蛇足で失笑物であった。

 

                         (M.O)

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マジック・雑感」カテゴリの記事

コメント

手品とはつくずく不思議なものであると思う、有名なカップ&ボールは紀元前2500年頃古代エジプトの王墓の壁画にカップ&ボールを演じているとも思える様子が描かれており世界最古のマジックと言われているが、それが超近代的な現在においても新しいものとして演じられていることに・・・・
全てのマジックがそれに近いものと思っているが、その元となっているのが、M.Oさんが連載されている石田天海 奇術50年の歩みであると思う。小学生の時に、お化け屋敷を見て仕掛け「幻茶屋」を自分で作ったという・・・22歳の時に明治天皇の前で手品を披露されたらしい。素晴らしい!!兎に角、石田天海さんの連載ありがとうございます。有り難く拝読させて頂いております。

投稿: 鍋の華 | 2014年10月24日 (金) 12時44分

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